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健康寿命延伸セミナー

講演2:心不全と肺炎~急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を踏まえて~

演者:九州大学大学院医学研究院 循環器病病態治療講座 準教授 井手友美 先生

 

講演3:インフルエンザウイルス感染症と二次細菌性肺炎~高齢者における管理・予防~

演者:琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器科・消化器内科学 教授 藤田次郎 先生

 

講演2の途中から参加

  • オーラルフレイルに積極的に介入することで嚥下能や認知機能を改善できる可能性があるデータが示され、印象的だった。現時点では症例数も少なく、まだ観察研究レベルではあるものの、今後の成果を期待したい。専用の器具を使って口輪筋などの表情筋を鍛えるトレーニング法を口トレーニングとして紹介していた。

 

講演3

  • インフルエンザの発症より5~7日たっても、下熱しないで呼吸器症状が増悪してきた場合は肺炎の合併を疑う。インフルエンザウイルスによる原発性ウイルス肺炎なのか、それとも細菌感染の関与した肺炎なのかを明らかにすることが重要。原発性インフルエンザ肺炎は、電撃性インフルエンザ肺炎とも呼ばれ一般的に経過が早い。かつてのスペインかぜやアジアかぜの流行時には、原発性インフルエンザ肺炎による死亡例が相当数みられた。しかし、最近のインフルエンザの流行時期には、二次性の細菌性肺炎の頻度が高く、原発性インフルエンザ肺炎は珍しい。
  • 二次性の細菌性肺炎の起炎菌として、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌が重要性。インフルエンザ感染後に細菌性肺炎が増加するのは、ウイルス感染により気道粘膜が傷害され、細菌が容易に付着増殖できるようになるためと考えられる。インフルエンザ発症と同時に細菌性肺炎を発症することもあり得る。高齢者や慢性呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、糖尿病、免疫不全などの基礎疾患を有するハイリスク患者では特に注意が必要。
  • インフルエンザウイルス感染症と二次細菌性肺炎の予防にはワクチン接種が必須。近年は肺炎球菌ワクチンも普及し、インフルエンザワクチンとの相乗効果も報告されているため、接種機会が増えている。2014年に、23価ワクチンが公費助成の対象となり、さらに、13価ワクチンも成人への使用が認められるようになった。13価ワクチンは、カバーされる肺炎球菌の血清型は若干狭いが、アジュバンドにより強力な免疫賦活が可能とされる。23価ワクチンと13価ワクチンの直接比較試験はないので、より予防効果の高いのはどちらかという明確な答えは現時点ではないとのこと。
  • 当院では1回目は公費助成のある23価ワクチンを接種し、5年以上経過してから2回目に13価ワクチンを追加接種するようにしてきました。助成のない方でも肺炎球菌ワクチンの接種を希望される場合があり、リスクの低そうな方には1回目を23価ワクチン、ハイリスクの方には1回目でも13価ワクチンといった使い分けも、個別に相談しながら対応しています。近年は乳児への肺炎球菌ワクチン接種は定期になり、小児救急医療にもインパクトがあるとのこと。この分野のエビデンスもさらに更新されていくと思います。