演題:エビデンスに基づく高齢者高血圧診療~原発性アルドステロン症も含めて~
演者: 大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学 講師 山本 浩一 先生
阿倍野区学術研究会に座長として参加しました。
- 高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では、75歳以上の高齢者でも140/90 mmHg未満を降圧目標にする。さらに併存疾患などによって降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合、75歳以上でも忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満への降圧を目指す。
- 高血圧診療では、「高血圧であるにもかかわらず治療を開始しない、または、ガイドラインで示されている降圧達成目標よりも高いにもかかわらず、治療を強化せず、そのまま様子をみる」ということが頻繁に起きている。適切な医療が提供されないことで脳心血管疾患や腎臓病の発症に悪影響を及ぼしている可能性がある。
- 一方で高齢者に対する高血圧診療においては、「フレイル合併例で本当にしっかり降圧してよいのか?」というクリニカルクエスチョンがある。フレイルに関しては、ランダム化比較試験であるSPRINT試験のサブ解析では積極的な降圧はpositiveな結果であった。しかし、その他の観察試験ではnegativeな結果も散見された。これらの研究結果を同等に扱うことはできないが、フレイル合併例での積極的な降圧は弱いエビデンスしかないので個別に対応する必要がある。
- 起立性低血圧合併でも積極的に降圧すべきであるが、収縮期血圧は脳血管イベント、拡張期血圧は転倒イベントと関連あることなども踏まえながら、バランスを考えて対応する。
- 介護施設入所者やエンドオブライフにある高齢者への降圧治療は絶えずその目的を検討して個別に対応する。
- この領域での処方の根拠は、多くのエビデンスの集積に基づいていますが、ガイドラインの運用には医師のしての経験やセンスが問われるという印象でした。改めて高血圧治療ガイドライン2019や高齢血圧診療ガイドライン2017を読み直すよい機会になりました。
また、原発性アルドステロン症に関しても基礎から臨床まで幅広い内容でした。
- 高齢者と若年者での発症様式の違い、性別による差異、そこから派生する仮説なども含め、一般開業医が興味を持ちやすい話題をご提供いただき、大変勉強になりました。