今年は梅雨が明けてから、急激に気温が上昇しました。
そのためか、梅雨明けから2週間以内で体調を崩され、場合によっては入院を要する患者様が多かった印象です。
暑さに慣れる:暑熱順化には10~14日ほどかかると言われています。
夜間の室温管理が難しい方、高齢・独居等で社会との結びつきが弱い方がこの時期に重症化しやすいように思います。
そのため、ご家族、担当のケアマネ、訪問看護師、介護士、地域包括の方々とできるだけ対策を練るように心がけています。
経験上、高齢・独居の方は、夜間にエアコンを使用しない場合の重症化リスクは非常に高いので
往診時にエアコンのタイマーを設定したり、関係される方にこまめな見回りと室温管理をお願いしています。
室内にエアコンがない場合はこまめに見回るしか、対策がないことが多いです。
水分をしっかり摂取していても、室温管理ができていない方は要注意です。
環境省の熱中症予防情報サイトでは、1日当たり1.2リットルを目安としたこまめな水分補給を推奨しています。
心不全や腎不全などあり、体に水が溜まりやすい方は、かかりつけの先生に熱中症対策を相談してください。
スポーツ飲料で水分補給する際には糖分の摂り過ぎに注意が必要です。特に糖尿病のある方は注意してください。
また、塩分摂取に関しては、日本人の食塩摂取量は平均1日10g程度と多く、必要量をはるかに超えています。
そのため、高血圧症の方は、高温環境下での作業や運動などで発汗が多い場合を除き、基本的には夏でも適切な減塩が必要です。
日頃から減塩ができている方は、適切な水分と塩分補給についてかかりつけの先生にご相談下さい。
食品表示のナトリウム(Na)量から食塩相当量を計算するには:ナトリウム(g)×2.54=食塩(g)
熱射病診断の鍵となるのは、①意識障害の有無と ②体温が40度以上かどうか
- 熱失神は、意識障害なしで、立ちくらみ、失神を伴うものの、体温正常
- 熱痙攣は、意識障害なしで、こむらがえりを伴い、微熱程度
- 熱疲労は、悪心、嘔吐、頭痛、めまい、低血圧を伴い、38~39℃とやや熱も高め
- 熱射病は、古典的熱射病と運動性熱射病に分類されます。
- 古典的熱射病では、高齢者が猛暑で数日かけてじわじわと高体温に。発汗は少ない。
- 運動性熱射病では、若年者が運動時に短時間で高体温に。発汗していることが多い。
熱中症は、熱失神<熱痙攣<熱疲労<熱射病の順に重症と判断されます。
高温環境で作業をしていて意識障害、高熱で運ばれてくるなど、典型的な重症例であれば比較的容易に診断できます。
しかし、症状が下痢、めまい、ふらつき、頭痛、吐き気などであれば、感染症などとの鑑別も必要です。
当院規模の医院には、熱中症と感染症の区別がはっきりとしない症状で来院する方が多いので、熱中症が疑われる場合はまず補液するようにしています。
そのうえで問診やその後の経過を確認しながら、感染症と区別するように心がけています。
熱中症では薬物で体温の低下を図ることはせず、クーリング:冷却が鉄則です。
重症例にアスピリン、アセトアミノフェンを使用すると肝障害、凝固障害起こす可能性もあります。
水分管理も大事ですが、室温・体温管理も同じぐらいに重要です。
当院は明日から夏季休暇ですが、皆様くれぐれもお体をご自愛ください。